現金のリスクと株式投資のリスク

今回は現金資産しか持たない場合に知っておくべきリスクと、株式投資の投資期間によるリスクの違いについてお話ししようと思います。

「投資なんて怖いからしたくない」

「投資ってギャンブルみたいなものでしょ?」

なんて思ってる人は是非見てってください。

インフレリスク

まずはインフレリスクについてです。

とりあえずお金を持っているすべての人に知っておいてほしいのは、日本においてもインフレが徐々に進んでいるため、年が経つにつれ現在保有しているお金の価値は下がっていく、という事実です。投資をしている人ですらインフレリスクについて考えている人はあまりいないかもしれませんが、インフレを考慮した場合としていない場合のリターンは大きく異なります。

 

では実際日本のお金の価値はどのように変わってきているのでしょうか?

 

まずはインフレがどの程度進行しているかの指標となるインフレ率というものを見てみましょう。ここではIMFが公開している各年の平均のインフレ率データを見ていきます。[1]

インフレ率の推移の折れ線グラフ

インフレ率の推移

グラフにしてみるとこのようになります。

正直これを見てもお金の価値がどう変化しているかよく分からないので、1980年の始めに1万円であったお金の価値の推移を重ねてみます。 

1万円の価値の推移の棒グラフ

1万円の価値の推移

このようになりました。1980年の始めには1万円の価値があったものが現在では約6600円にまで減っているのです。
日銀は2013年1月から毎年の目標インフレ率を2%に設定していますが、これが達成された場合には今回計算した期間で1万円が約4400円まで減ります。何もしてないのに40年ちょっとで資産の約55%がなくなる、、、何とも恐ろしいですね。

コロナの影響もありますし、インフレ率がこの水準になるにはまだしばらく時間がかかるとは思いますが、基本的には僅かながらもインフレは進んでいくと考えていいでしょう。

 

では次のお話に移ります。

投資期間によるリスクの逓減

続いては投資期間によってリスクの高さがどのように変化していくかを見ていきましょう。

リスクの高さという表現は曖昧でわかりにくいので、ここでは2000年1月から2020年5月までの期間において、保有期間を1年、5年、10年、15年、20年と取ったときの年平均リターンの散らばり具合を指すことにします。(例えば20年の保有期間を取る場合、2000年1月から2020年1月まで、2000年2月から2020年2月まで、2000年3月から2020年3月まで、2000年4月から2020年4月まで、2000年5月から2020年5月までの5つのパターンでそれぞれの年平均リターンを計算します。散らばり具合が大きいということはそれだけ安定していないということなので、この散らばり具合が小さく、かつマイナスになっていなければリスクが低いといえるでしょう)

ここでは株価指数に日経平均株価を使い、各月の始値を使って計算します。[2]配当利回りは1.5%で、受け取った配当金はすぐさま再投資することにします。(配当利回りは2000年1月から2020年4月までの東証一部上場企業全体の月ごとの単純平均利回りの平均とほぼ同じ値で、少し低めの水準に設定してあります。[3]

 

それでは計算結果を箱ひげ図にして示します。

保有期間ごとの年平均リターンの散らばり具合の箱ひげ図

保有期間ごとの年平均リターンの散らばり具合

ぱっと見で年平均リターンのばらつきが小さくなっていることが分かります。また保有期間が10年間以下の場合には年平均リターンがマイナスになることもありますが、15年間以上保有した場合の年平均リターンはプラスにしかなっていません。

20年間保有した場合の年平均リターンがかなり低くなっていることが気になる方がいらっしゃるかもしれませんが、これはコロナの影響を受け市場が大暴落した為です。過去最大の週間下落幅を記録した今回の暴落に際してもマイナスにはなっていない、かなりすごいと思いませんか?

 

この結果が示すように配当金を再投資しつつ、長期間にわたって保有することで株式投資のリスクは限りなくゼロに近づけることが出来るのです。

まとめ

・お金の価値というものは時とともに減っていくものである。

・株式は配当金を再投資しながら長期保有することでリスクを限りなくゼロに近づけることが出来る。

今回の記事で現金資産のみしか持たないことのリスクを知り、株式投資への恐怖心を少しは取り除くことが出来ていたら幸いです。

 

本記事内ではさりげなく配当金を再投資した前提で進めましたが、配当金を再投資することによって得られる複利の力はかなり大きいです。次回の記事ではこちらをテーマに、配当金の再投資をした場合としなかった場合のリターンの違いについてのデータをお見せしたいと思います。

 

 <参考>

[1] https://www.imf.org/external/datamapper/PCPIPCH@WEO/JPN (閲覧日:2020/5/20)

[2] https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index?type=download (閲覧日:2020/5/20)

[3] https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/index.html (閲覧日:2020/5/20)